研究概要 |
平成元年度に行った予後良好な総義歯装着者50名および正常有歯顎者50名のEMG・SGG同時記録による咀嚼運動路咀嚼筋筋電図の分析結果では,咬合相時間の延長,最大開口量,および最大開,閉口速度の減少,さらに筋電図時間的ならびに空間的パタ-ンなどに総義歯装着者特有のモ-ドが見い出された。そこでこれらのデ-タにつき,統計的手法を用いて総義歯装着者の咀嚼機能に関する正常範囲を求め,独自の咀嚼機能評価チャ-トを試作した。この14項目のパラメ-タからなる評価チャ-トに,各種の障害を実験的に付与した総義歯での咀嚼運動時のデ-タを代入した結果、咀嚼運動リズムや下顎運動経路が障害の種類や程度によって特徴ある変化パタ-ンを示すことが明らかとなった。 以上の総義歯装着者の正常値については,顎態の面での検討がなされていないことから,本年度は引きつづき機能的動態の分析に加え,とくに頭部エックス線規格写真の分析を行った。つまり,機能評価を無歯顎者の頭蓋や顔面骨の形態との関連においてより詳細に行って,新義歯製作に役立てることを目的とした。 総義歯装着者22名についての頭部エックス線規格写真の分析結果は,(1)無歯顎状態の期間と下顎歯槽堤の高さとには頁の相関があること,(2)無歯顎者の顔面頭蓋,とくに上下顎歯槽堤の関係と形態は3型に分類できたこと,(3)総義歯の咬合平面は仮想カンペル平面に対し,後方で離開すること,(4)義歯の咬合平面の垂直的位置関係は有歯顎者とほぼ一致すること,および(5)Gonial angleと有歯顎の下顔面高の値は,無歯顎者の咬合高径決定の参考となることなどがわかった。 従って,平成3年度には,これらセファロ分析についてさらに例数を追加,分析パラメ-タの再検討を行うと共に,咀嚼運動機能の動態との関連に研究を進め,上記の機能評価チャ-トの確立を行う予定である。
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