研究概要 |
純チタン鋳造体を補綴臨床に応用するための基礎研究として,鋳造体の曲げ特性について鋳型温度が曲げ弾性率や変曲点(便宜的比例限),0.2%耐力,0.03%耐力に及ぼす影響について検討を加えた。 また,これらの結果を引張試験によって得られた値と比較検討した。 試料には4×1.5×40mmの鋳造体を作製したが、鋳造時の鋳型温度を,実温,30℃,600℃,900℃に設定し,得られた鋳造体を30秒間サンドブラスト処理した後,レントゲによる非破壊検査を行い,内部欠陥の認められない鋳造体を曲げ試験に用いた。 試料数は各条件とも5個とし,得られた値の平均値を算出し5%危険率における有意差の判定を行った。 その結果、各鋳型温度における曲げ試験において曲げ弾性率に有意差が認められたのは、室温鋳型(8.18×10^3kgf/mm^2)と900℃鋳型(9.07×10^3kgf/mm_2)間だけであった。耐力については、比例限,0.03%耐力では明確な差は認められなかったものの,0.2%耐力において鋳型温度が高くなるにつれ耐力も大きくなる傾向が認められた。これらの傾向は引張試験によって得られた実験結果と類似しており,曲げ特性においても鋳型温度はチタン鋳造体の物性に影響を及ぼすことが示唆された。 これらの原因は、これまでの一連の実験からチタン鋳造体素層に存在する埋没桟中のSiとの反応層の厚みや,表面硬化層(酸素固溶層)の存在によるものではないかと考えられた。
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