口蓋裂や顎欠損を有する被験者の補綴処置前後の発音機能改善の評価を行うために、音響学的解析を行い、以下の結果を得た。 被験者は、欠損が硬口蓋に限局している者が2名(グル-プI)、欠損が軟口蓋まで及んでいる者が1名(グル-プII)、欠損が軟口蓋後縁まで及んでいる者が2名(グル-プIII)の5名である。被験者は、無声破裂音、有声破裂音、弾音である。 1.発音明瞭度検査では、グル-プI、IIは義歯装着前には低いが、装着後に向上した。グル-プIIIは、装着前後とも明瞭度は低い。 2.Nasometer(6200ー2型)により、処置前後での鼻漏出気流を測定し、正常者10名のデ-タと比較した。グル-プI、IIは、義歯装着前のNasalance値は高いが、装着後に正常者のNasalance値に近づいた。グル-プIIIは、装着前後のNasalance値は、グル-プI、IIに比べて全体的に高い。しかし、被験音別に見ると、装着後に改善された音もある。Threshold、Time historyについても同様の傾向が見られた。 3.音声周波数分析装置による3次元ソナグラムによって、破裂音では、(1)spike file(2)子音前の空白(3)母音への移行(4)母音ホルマント、弾音では、(1)子音部、(2)移行部に着目し、各々の要素に正常3点、やや異常2点、異常あり1点、まったく異常0点と4段階の評点を与えて評価した。そして、子音の合計点数の満点に対する%をその子音のソナグラム正常度とし、正常者10名のデ-タと比較した。その結果、ソナグラム正常度は、グル-プI、IIでは、義歯装着後に明らかに向上し、グル-プIIIでも、装着後にはやや向上する傾向が見られた。
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