研究概要 |
側鎖にフェニル環,ナフタレン環,カルボキシル基を有する疎水性,親水性メタクリレ-トモノマ-を数種合成し,それらモノマ-にブロムやクロルでラベル化したメタクリレ-トモノマ-も数種合成した。合成モノマ-を主成分としたBonding agentを試作し,象牙質への接着力の測定接着界面のSEM観察やハロゲン,Ca,Pの分布のEPMA分析を行った。その結果,ハロゲン化が接触角,粘度,接着力に与える影響は極めて少ないことが明らかとなった。また,象牙質への浸透性の高いものほど接着力が強くなる傾向を示し,特に極性基を有するモノマ-の浸透性は優れていた。しかし,通常のBonding agentは特殊な接着性モノマ-を含む多成分系に調製してあり,すべてのモノマ-をハロゲンでラベル化することは極めて困難であった。そこで、Bonding agentにハロゲン化モノマ-をTracerとして添加すれば同様の分析が可能と考え,ハロゲンのEPMA分析による耐酸性象牙質の確認と厚さの測定の可能性を検討した。すなわち,クロルメタクリレ-トモノマ-をBonding agentに4種のブロムメタクリレ-トモノマ-をTracerとして選び合成し,接着界面のClとBrのEPMA分析よりBonding agentとTracerの処理象牙質表層内への浸透性の比較を行った。また,Tracerの影響を検討するために接着力の測定や接着界面のSEM観察も行った。その結果,Tracerを添加しても接着力の低下は認められず、接着界面の耐酸性象牙質層と思われる層も全て近似していることがSEM観察より明らかとなった。また,Brの終点とClの終点は一致しており,TracerがBonding agentと共に処理象牙質表層内と同じ位置まで浸透することがFPMA分析より明らかとなった。この様に耐酸性象牙質層の確認や厚さの測定にTracer法が極めて有効であることが明らかとなった。
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