1.ドンリュウラット(8週齢)の大腿部の筋肉に熱電対の温度センサ-と血流計のセンサ-を刺入し、245OMHzのマイクロウェ-ブで43℃まで加温した。大腿動脈にカテ-テルを刺入して同時に血圧もモニタ-した。大腿分筋肉の温度が定常状態に達してから、アンギオテンシンIIを投与して血圧を上昇させたところ、血流に大きな変化はなかった。したがって温度にも大きな変化はなかった。 2.ラットを屠殺し、血流がない状態で43℃まで加温したのち自然冷却させたところ、その温度降下はきわめて遅く、約1℃/5分ほどであった。この実験は熱伝導のみによる冷却効果を評価するために行なったのであるが、この結果から、通常は血流による冷却効果を考慮するだけでよいことがわかった。 3.最初に記した実験をラットの背中に移植した腫瘍で行なった。マイクロウェ-ブで加温して温度が定常状態に達してから、アルギオテンシンIIを投与して血圧を上昇させたところ、腫瘍内の血流は増加したが、腫瘍内の温度はあまり降下しなかった。これは当初の予想と異なった。 4.ラットの体重(150g)では熱容量が人間などに比べて非常に小さいため、局所を加温してもすぐに全身の体温が上昇してくる。3.の結果は、全身の血液の温度が上昇したために、本来冷却作用を持つ血流の冷却効果が減少したことによりもたらされた可能性もある。したがって、ラットの体温の上昇あるいは、腫瘍に供給される血液の温度の上昇も考慮した実験および解析が必要である。
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