Ki-67抗体の有用性を検討するため、種々のヒト腫瘍に免疫組織学的に検索を行った。その結果、ヒト腫瘍においてKi-67を用いると、凍結切片を要するものの迅速かつ、容易にその増殖率が算定可能で、非常に有用であることが判明した。さらに、HeLa細胞を用いて、細胞増殖を抑制することによりKi-67の認識する抗原の発現量が減少していくこをフロ-サイトメトリ-を用いて定量的に示した。現在、頭頸部腫瘍におけるKi-67による免疫組織学的検討も50症例をこえ、化学療法効果、予後との関係について検討を加えていく。 次に、近年主として欧州の研究者らにより関心を集めている、増殖能の指標の1つと考えられるAgNORについても検討し、現在培養細胞を用いて増殖能とAgNORとの関係を定量的に調べ、結果として、増殖能が抑制されていくにつれいわわゆるAgNOR数は減少していくが、これは単なる減少ではなくて、本来のAgNOR数は変化しないがAgNORが融合するために見かけ上の数が減少していることを示した。実験内容は現在投稿中である。また、唾液腺腫瘍においてAgNORの発現を検討を行い、悪性、良性の鑑別に有用であることを示した。この、AgNORを腫瘍組織に応用した報告はわが国では初めてだと思う。また、BrdUrdに関しては、免疫組織化学染色を行うに当り、denaturationの際の、従来までの塩酸処理に変わるDNase処理が有用であることを実験的に示した。本年度は、研究対象としている増殖マ-カ-の基礎的な検討が主体であった。今後はこれらKi-67、BrdUrd標識率、AgNOR数、フロ-サイトメ-タ-の4パラメ-タ-間の相関を頭頸部腫瘍で検討し、それらの特徴を総合的にとらえ、病理組織像や臨床的なパラメ-タ-と対比さて行く予定である。
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