小児45名を対象とし、笑気、酸素、ハロセンまたはエンフルレン麻酔下のサクシニルコリン(Sch)1mg/kg投与の有無が及ぼす影響について血清ミオグロビン、CPK、電解質値について検討した。その結果、血清ミオグロビン、CPK、K、P値の上昇とNa、Ca値の低下は、ハロセンまたはエンフルレン麻酔のいずれにおいてもSchを投与した群において著しいことが判明した。これらの値は悪性高熱症において変動が著明なことが報告されているが、本研究の結果はSchの投与が悪性高熱症の発症を誘発する危険性が高いことを示唆しており、本症の発症を予防するためにはSchを投与しないことが勧められることが示された。本結果の詳細については「麻酔」に投稿し、採用され、1990年39巻10号に掲載予定である。 さらに、小児43名を対象とし、笑気、酸素、ハロセン麻酔にSch1mg/kgを投与した場合に、Sch投与前にチアミラ-ル2mg/kgと4mg/kgの投与を行なって、チアミラ-ルがこれらの値に及ぼす影響について用量別に検討した。その結果、チアミラ-ル4mg/kg投与はミオグロビン値とCPK値の上昇を抑制するが、2mg/kgでは抑制効果は得られないことが判明した。電解質についてCaを除き、2mg/kgでも変動は抑制される傾向にあったが、チアミラ-ル無投与群に対して有意差を示さなかった。 また、悪性高熱症誘発性があるとされているリドカインについては静脈内投与と硬膜外投与した場合の結果について、現在まとめているが、少なくともミオグロビン値とCPK値を上昇させる作用はないものと考えられた。
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