小外科手術を受ける小児75名を対象として、サクシニルコリン(SCC)1mg・kgー1静脈内投与後の血中ミオグロビン(Mb)値とクレアチンフォスフォキナ-ゼ(CK)値の変動について検討した。対象を7群にわけ、HS群、ST2群、ST4群、SL群の5群では緩徐導入後にSCClmg・kgー1を静脈内投与して気管内挿管を行い、笑気・酵素・ハロセンで導入と維持を行った。さらに、SCC投与前に、ST2群ではチオペンタ-ル2mg・kgー1、ST4群ではチオンペンタ-ル4mg・Kgーl、SL群ではリドカイン2mg・kgー1を投与した。ES群ではSCC1mg・kgー1を静脈内投与して気管内挿管を行い笑気・酸素・エンフルレンで導入と維持を行った。H群とE群ではSCCを投与せずに気管内挿管を行ない、H群では笑気・酸素・ハロセン、E群では笑気・酸素・エンフルレンを用いて導入と維持を行った。SCC投与群では投与前に、無投与群では気管内挿管1分前に1回目の採血を行い対照値とし、SCC投与5分、20分、60分後の計3回、無投与群では気管内挿管後3分後を5分後と同じたイミングとみなし計3回採血した。血液は血清分離後凍結し、MbはRIA法により測定し、CKはロザルキ-変法にて測定した。 その結果、HS群とES群では両値は著明に上昇し、60分後の平均値はそれぞれ、約2000ng・mlー1と約180IU・lー1であったが、H群とE群では両値の著明な上昇はみられなかった。ST2群とSL群では両値の上昇は影響されなかったが、ST4ではSH群に対してMbが約3/10倍、CKが3/5倍の値を示し、上昇は抑制された。以上の結果から、MbとCK値の上昇は主としてSCC投与によるものであり、チオペンタ-ル4mg・kgーlの投与は上昇を抑制させるが、チオペンタ-ル2mg・kgー1は抑制効果がないものと考えられた。また、リドカインは一時悪性高熱症の患者に禁忌とされてきたが、少なくともMbの血中への遊出を促進させる効果はなく、ミオグロビン血症の患者に安全に使用出来る可能性が示された。
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