前年度まではラット上顎第一臼歯に歯や歯槽骨の破折を伴わない範囲で最も強い脱臼性損傷を与え、受傷後の病後変化を明らかにしてきた。今年度はこれより軽度の脱臼性損傷を与え、受傷歯の経時的な病理変化を検索することを計画した。先ず、これまで用いてきたラット臼歯加圧装置を調整し、第一には装置による加圧時の臼歯の移動距離を短くすることを試み、第二には加圧に用いる外力を減少させ、得られた損傷の程度やばらつき等について調べた。ところが、目的とする比較的軽度の損傷を均一に、かつ再現性をもって生じさせるための実験条件の設定が容易ではなく、この検討作業に時間を要し、本年度末までには結論を得るに至らなかった。 一方、平成2年度まで行った実験については、引続きより詳細な分析と評価を行うため、損傷を受けた第一臼歯の非脱灰切片を作製し、軟X線装置による写真撮影を行った。その結果、歯槽骨等の変化は光学顕微鏡での観察を裏付けるものであった。また、このような損傷を受けたラット第一臼歯に対して固定を試み、固定が脱臼歯の創傷治癒に与える影響を検索するための動物実験モデルの作製も開始した。まず、固定方法としてセメントとアルミ箔による被覆と、接着性レヂンでの接着との2つの方法を採用した。各方法が固定として有効な期間や、使用材料や固定方法が損傷に与える影響などについて現在検討を進めている。本年度内に結論を得ることができなかったが、今後さらに実験を継続して、どちらがより良好な結果をもたらすか明らかにする。そして、その方法を応用して、損傷を受けてから固定開始までの時間や固定期間を変えることにより、創傷治癒に与える固定の影響を観察する予定である。
|