研究概要 |
研究実施計画に従い、以下のような手順によって、う蝕誘発面S.mutansから2種類のグルコシルトランスフェラ-ゼ酵素(GTF-IとGTF-S)遺伝子をクロ-ニングすることができた。 1.S.mutansOMZ176(d)の染色体DNAをPstIで切断後、pBR322ベクタ-のPstI部位に挿入し、E.coliC600にトランスフォ-メ-ションした。 2.Tc耐性、Ap感受性株のうち、抗GIF血清と反応する蛋白質を産生しているもの5株が得られた。これらのうち4株は、スクロ-スから、デキストラナ-ゼ高感受性の水溶性グルカン(メチル化分析の結果、α-1,6結合が73%を占めていた)を合成するGTF(分子量15万〜16万)を、他の1株はムタナ-ゼ高感受性の非水溶性グルカン(α-1,3結合が88%を占めていた)を合成するGRF(分子量15万〜16万)を産生していた。 3.水溶性グルカンを合成するGTFは、抗GTF-S血清に対し、GTF-Sと融合するゲル内沈降線を形成し、この血清によって60%活性阻害をうけることからGTF-S遺伝子産物と考えられた。この遺伝子を持つプラスミドPGT72は、約6.4kbのPstI挿入フラグメントを有していた。一方非水溶性グルカンを合成するGFTFは抗GTF-I血清に対し、GTF-Iと融合するゲル内沈降線を形成し、この血清によって80%活性が阻害されることからGTF-I遺伝子産物と考えられた。 この遺伝子を含むプラスミドPGT31はPGT72と同様約6.4kbのPstI挿入フラグメントを有していたが、PGT72フラグメントはFioRI、HintIIIで各2ケ所、SalIで1ケ所切断されるのに対し、PGT31フラグメントはHintIIIで3ケ所切断され、FioRI、SalI切断部位は持たないことから、各ララグメント上の遺伝子(gtfsとgtfI)は、それぞれ別個の遺伝子と考えられた。 4.今後はこれら2種類の遺伝子および遺伝子産物について比較検討していく予定である。
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