研究概要 |
RNase H(大腸菌)の基質であるRNA・DNAハイブリドのDNA鎖にフェニルジアジリン誘導体を導入し,光照射によってこの残基の活性化(カルベンの発生)を行い,RNaseHへの部位特異的クロスリンキングを試みた。DNA鎖の配列は5'ーGTCATCTCCー3'であり,光活性基は5'末端にリン酸ジエステル結合を介して,あるいはオリゴマ-内部に配置されたアルキルアミノ基に導入された。後者の調製には,上記配列のTがウリジン誘導体(糖部2'位にアミノリンカ-が結合)に置換した修飾オリゴマ-を合成して用いた。合成した光反応性DNAとRNAのオリゴマ-ハイブリドはRNase H反応において,リボ鎖の切断部位や速度に違いがみられるが,基質として認識されることがわかった。酵素の光親和性標識は基質(デオキシ鎖を ^<32>Pで標識)の切断が起こらない条件(EDTA存在)で,0℃で長波長UVを照射して行った。この条件でも未照射混合物はゲル電気泳動の分析により,酵素・基質複合体を形成することが確認された。各クロスリンク反応の収率は1〜3%であり,阻害実験の結果から,この反応は基質認識部位に特異的であると考えられた。光反応後,陽イオン交換クロマトグラフィ-により未反応酵素と標識酵素を分離できたが,後者には核酸基質が混在していた。この混合物をリシルエンドペプチダ-ゼで消化し得られたペプチドマップをRNaseHのものと比較した。各種オリゴマ-による標識体の結果をまとめると,減少ペプチドはLEP2,3,4であった。RNase Hの触媒活性部位は10Asp,48Glu,70Aspであることが蛋白工学的手法で明らかにされており,これらの残基は上記ペプチド断片中にある。このように本研究はLEP2,3,4がRNase Hの基質認識部位を形成していることを明らかにした。
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