数種の生物活性天然物あるいはその周辺化合物の共通のキラルビルディングブロックとして、3.4-2-置換ピペリジン誘導体及び2.3-2-置換ピロリジン誘導体と分子設計し、それらを不斉合成するとともに、天然物への変換を試みた。以下その概略を述べる。 1)ピペリジン誘導体の不斉合成とその利用 分子内不斉Michael反応を用い、3.4-2置換ピロリジン誘導体を構築することが可能と考え、まず反応に適した基質を分子設計し、合成した。その基質の環化反応を、種々の不斉アミンを用い、種々の条件下検討を重ねた所、不斉アミンとして(+)-α-phemylethylamineを用い、テトラヒドロフラン中、モレキュラ-シ-ブ4A存在下、約5℃で反応を行うことにより、欲する3.4-トランスピロリジン誘導体を約90%eeで得ることが出来た。又(-)-α-phenylethylamineを用いて同様の反応を行うことにより、先に得たピロリジン誘導体の対掌体を同程度の%eeで得ることが出来た。なおこれらのピロリジン誘導体を、HBr塩としてEtOHより一度再結晶することにより、そのエナンチオ過剰率を98%以上まで高めることが出来た。さらにこのピロリジン誘導体より、(-)-ajimalicine、(-)-tetrahydroalstonine及び(+)-yohimbineへの変換に成功した。 2)ピロリジン誘導体の不斉合成 まず不斉エポキシ化を利用するピロリジン誘導体の合成プロセスを設計した。プロパルギルアルコ-ルを出発原料とし、不斉酸化、ベンジルイソシアナ-トとの反応、ついで分子内環化を行うことにより、2.3-2置換ピロリジン誘導体を、そのすべての異性体とともに約95%eeで合成することが出来た。現在これらのピロリジン誘導体より、ピロリチジンアルカロイドへの変換を行なっている。又同様の手法を用い、S-対称あるいは6-対称性を有する2.5-2置換ピロリジン誘導体の合成を行っている。
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