研究概要 |
著者はこれまで、生物活性イレド-ルアルカロイドのキラルビルディングブロック(不斉合成素子)として、ピペリジン体を、ヌピロリチジンアルカロイドの不斉合成素子として、ピペリジン体を分子設計し、これらを各々分子内不斉Michael反応及びSharpless不斉酸化を用いて不斉構築するとともに、これらより目的の天然物類の合成を行なって来た。今年度はさらに、ストリキノスアルカロイドや、アロカイニン酸の不斉合成素子として、新たに3,4位に官能基を備えたピロリドン体を、ヌピロリジンアルカロイドやカルバベネム類の不斉合成素子として、3'位に水酸基2,5位に官能基を備えたピペリジン体を分子設計した。ピロリドン体は分子内不斉Michael反応により合成し得る基貭として設計した鎖状化合物を、不斉塩基として、トフェニルエチルアシンを用い、速度論的支配の条仲のもと環化反応を行うことによって,約60%eeの光学純度で合成することが出来た。今後このピロリドン体の光学純度の向上ならびに目的とする天然物への変換を行う予定である。一方ピペリジン体は、Sharpless不斉酸化、オキサゾリジノン体の形成、ついでパラジウム触媒を用いるアミノ環化付加反応を行うことによって、約80%eeの光学純度で合成することが出来た。本合成法は、原料のオレフィン体の異性体及びSharpless不斉酸化に用いる酒石酸エステルを組み合せることによって、すべての異性体を作りわけできるという利点をもつ。今後さらにこのピペリジン体から目的とする天然物及び生物活性化合物への変換を行う予定である。
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