研究概要 |
バクテリアの細胞壁のペプチドグリカンの重要構成単位であるDーアラニンはLーアラニンより、アミノ酸ラセミ化酵素により生合成される。アミノ酸ラセミ化酵素の中で酵素化学的に比較的よく研究されているものにBacillus stearothermophilusの耐熱性アラニンラセミ化酵素、Salmonella typhimuriumのdadB、dal両アラニンラセミ化酵素、Pseudomonas striataのアミノ酸ラセミ化酵素などがある。これらの酵素の補酵素ピリドキサ-ルリン酸結合アミノ酸残基Lys周辺のアミノ酸配列も明らかにされている。B.stearothermophilus AlaーValーValーLysーAlaーAsnーAlaーTyr(旧アミノ酸配列:AlaーProーProーLysーAlaーAsnーAlaーTyr);S.typhimurium dadB:ValーTrpーSerーValーValーLysーAlaーAsnーAlaーTryーGlyーHisーGlyーTle;dal:LeuーValーAlaーValーValーLysーAlaーAsnーAlaーTyrーGlyーHisーGlyーLeu;P.striate:LeuーThrーAlaーValーLeuーLysーAlaーAspーAlaーTyrーGlyーHisーGlyーTle.本研究においては、これらのペプチドを化学的に合成し、合成ペプチドをモデル活性中心としてそのコンフォメ-ションを研究することにより、これらの酵素の反応機構、あるいは有用な阻害剤(抗菌剤)開発の基礎概念を得ることを目的に研究を行った。即ち、まず、5種の活性中心の活性中心のアミノ酸配列の相同性に着目し、合成に際し、多数の保護区分ペプチドを合成し、この保護ペプチドをそれぞれのアミノ酸配列に従い、フラグメント縮合により目的とする保護オクタペプチド2種、テトラデカペプチド3種をすべて液相法により合成した。ここに得られた保護ペプチドのN未端を研究の目的に都合のよいようにNーアセチル基に変換後、それぞれTrimethylsilyltriflateーthioanisole系で保護基を除去し、目的とするN未端がアセチル化されたオクタペプチド2種、テトラデカペプチド3種を得ることができた。また、合成中間体のBocーLeuーThrーAlaーValーLeuーOMe,BocーAlaーProーProーLysーAlaーAsnーAlaーTyr(Bzl)ーOBzlについて´HーNMRを用いそれらのコンフォメ-ションについても検討を加えた。
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