研究概要 |
現在までに、天然フォルスコリン及びその同族体からの化学変換により100種以上の誘導体がつくられ、それらを用いた構造活性相関の研究が進められてきたが、1αーOH、9αーOH、及び11位カルボニル基にかけての領域が活性発現に関わっているとの知見が得られているに過ぎない。我々は最近、Z,Eージエンを組み込んだブテノリドの異性化触媒チオフェノ-ル存在下での分子内DielsーAlder反応を鍵段階とする(±)ーフォルスコリンの全合成を達成した。全合成により得られた(±)ーフォルスコリンは、ラット脳顆粒分画のアデニル酸シクラ-ゼに対し、天然品の約1/2の活性を示した。一方、(±)ー1,6,7ートリデオキシフォルスコリンは予想通り活性を示さなかった。そこで、6α、7αー水酸基の活性発現に及ぼす影響を調べるべく、更に短段階経路によるAB→C環構築法の開発を目指し、天然フォルスコリンからの誘導が困難な(±)ー6、7ージデオキシフォルスコリンの合成を進めた。しかし、ここに得られた(±)ー6,7ージデオキシフォルスコリンも全く活性を示さないことが判明した。この結果、1位、9位水酸基のみならず、6位及び(或いは)7位水酸基も活性発現に必要であることを示唆するものであった。次に、上記生物活性試験の結果を踏まえ、さらにこれまでに蓄積した合成上の知見を活かして、とくに(ー)ーフォルスコリンの全合成及び光学活性中間体を基盤とする新たな関連誘導体合成に取り組んだ。α、βーアセチレニックケトンの(S)ーBINALーH還元(91%ee)と再結晶を併用することにより得られる光学純度100%のS配置のプロパルギルアルコ-ルから、ブテノリド構築を経て望みの4個の不斉中心が備わった三環性ラクトン中間体に導くことができ、現在、上記目標の完成の向け研究を進めている。一方、フォルスコリンの臨床使用を困難にしている水に対する難溶性の問題を解決すべく、極めて緩和な条件下でのグリコシル化反応を開発することにより、7位水酸基のグリコシル化を行い対応するグリコシド体合成に成功している。
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