Halimedatrialはバハマ産の石灰藻から見出されたジテルペノイドで、抗菌活性、抗カビ作用、ウニ受精卵の卵割阻害作用など多彩な生理活性を示し、特異な化学構造を持つことから薬学的にも合成化学的にも興味の持たれる化合物である。しかし、この化合物の絶対配置は未決定である。著者は、halimedatrialのエナンチオ選択的合成法を確立し、その絶対配置を含めた全合成を明らかにする目的で本研究を行った。 まず、本合成における重要な問題点の一つであるジホルミルシクロペンテン部の構築についてモデル化合物を用いて検討した。その結果、(S)-4-ヒドロキシ-2-シクロペンテノンの不斉中心をとなりに移し、4-アルキル-2-シクロペンテノン誘導体とし、これとトリメチルシリルアセチレンとの光反応によりシクロブテン環を形成し、その二重結合を酸化的に開裂する方法でこの問題を解決した。 次いで、モデル実験で得た知見を基にhalimedatrialの合成を検討し、下図の合成経路によりhalimedatrialの鏡像体である(+)-halimedatrialの全合成を達成した。また、この合成によりhalimedatrialの絶対配置を確定した。
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