研究概要 |
3員環や4員環などを内臓する化合物は、その高いひずみエネルギ-解消を推進力としてより安定な環などへ原子価異性化する。これを利用し、高ひずみ化合物に窒素,酸素,硫黄原子などを導入,または種々の既知の環を縮合させたものから環拡大させれば新規な7,8員環などの中員複素環が,転位反応を起こさせれば多環縮合複素環が生成できるとの考えで,昨年度から引続いて検討を行い次の成果を得た。 1.高ひずみ化合物の環拡大反応を利用する7員複素環の合成 シクロブタ〔b〕インド-ルなどのようなベンゾビシクロヘプタン環に窒素,酸素,硫黄,リン原子を含むひずみを持った化合物を合成し,これらの液相または気相下での熱反応により,ベンゾアゼピン,ベンゾオキセピン,ベンゾチエピン,ベンゾホスフエピンなどの7員複素環の合成に成功し,これらの複素環合成法を確立すると共に合成した複素環化合物の医薬品などへの有効利用を現在検討中である。 2.高ひずみ化合物の転位反応を利用する縮合複素環の合成 アジンNーオキシドやNーイミドなどとベンザイン類との1,3ー双極子付加で生成するひずみを有する付加体の熱転位反応により,新規なピリドオキセピン類やアゼピン類の合成が可能であることを明らかにできた。 3.高ひずみ化合物を中間体として経由する反応の合成への利用 反応過程で不安定中間として高ひずみ構造のものが生じる場合にも、その中間体の異性化や転位を利用する環変換が可能であり,たとえば,フエニルアジドは熱や光で脱窒素して生成するアジリン中間体(3員環)から,求核試薬が存在すると環拡大が起こりアゼピンを生成する。この反応を種々のピリジン,キノリンなどの芳香環にアジド基を有するものに応用し,ジアゼピン,ベンゾジアゼピン,トリアゼピン類の合成法となることを明らかにした。
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