研究概要 |
本研究の目的である脳血管治療薬の最も有効な合成原料となり得る2つのタイプのアルキルチオフロピリドン体の大量合成法を、前年度の成果として確立した。また、それらに含まれる代表的な官能基であるアルキルチオ部分、エノ-ルエ-テル部分、及びラクタムカルボニル基などの基本的な化学反応性を検討したので、本年度はおもに有用医薬品の効率的合成への応用を検討した。 1)共通中間体であるアルキルチオフロピリドン体の大量供給とそれらを用いる既知の脳血管治療薬であるキニン系、ピペリヂノカルビノ-ル系、及びビンカアルカロイド系医薬品への誘導を検討した結果、有用医薬品であるquinine,ajmalicineなどの形式合成が完成した。 2)アルキルチオフロ(3,2ーc)ピリドン体から、脱離ー付加型反応を適用して脳代謝賦活作用を有するeburnamineーvincamineアルカロイドの合成研究を行なった。すなわち1)で大量合成したフロピリドン体から塩基存在下での求核試薬との反応により3,4ージ置換ピペリヂン体への誘導、及び求電子試薬との反応により3,3ージ置換ピペリヂン体への誘導を行なった。またそれらの結果に基づいてビンカアルカロイドvincamineの形式全合成を完成するとともに、6環性アルカロイドcuanzineの合成の可能性を見いだした。また、これらの合成過程で得られる各種誘導体について薬理作用を調査中である。 3)前年度に行なった成果の1つであるアルキルチオフロピリドン体の大量合成法にヒントを得て、最近注目されているヘテロ環を有する抗ムスカリン作用薬の類似体を合成した。
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