研究概要 |
本研究は脳血管性痴呆の治療薬としての脳代謝賦活作用、脳血管拡張作用を示す医薬品及びアルツハイマ-型痴呆の治療薬としての抗ムスカリン作用を示す医薬品の両構造に共通性を見いだし、両者を単一の共通中間体から最も効率的に合成しようとしたものである。 まずこれまでに開発されている脳血管性治療薬及びアルツハイマ-型治療薬の両者が置換ピペリジン骨格を共通構造として持つ事に着目し、両者の医薬品を双環性ヘテロ環であるアルキルチオフロピリドン体から効率的に合成することを目的として、このアルキルチオフロピリドン体の大量合成法を検討した。その結果、本研究グル-プが開発した還元的光閉環反応が有効であることを確認した。次にこの双環性ヘテロ環であるアルキルチオフロピリドン体はアルキルチオ部分、エノ-ルエ-テル部分、及びラクタムカルボニル基という3つの官能基を合わせ持った機能性の高いヘテロ環であることが予想されたのでそれぞれの官能基を足がかりとした反応性を検討した。その結果、合成化学として有用な炭素一炭素結合形成反応を開発することができた。そこでそれらの反応を応用して生理活性の強いアルカロイドであるtecomanine,emetine,quinine,ajmalicine等の効率的合成を達成することができた。ついでこれらの結果に基づいて、脳血管治療薬として実用化されているeburnamonineの形式的合成を達成することができたが、eburnamonineの同族体であるさらに構造の複雑なcuanzineに関しては全合成には至らず、課題として残った。また、既知のアルツハイマ-型痴呆薬の類似体としてのピペリジン誘導体をいくつか合成した。また本研究途上で得られた誘導体の中からより薬理活性の高い新しい脳血管治療薬を創製する事を目的として、現在それらの薬理活性を調査中である。
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