研究概要 |
本研究は、生物学的同位体効果のきわめて小さい重酸素(^<18>O)で標識した胆汁酸を用いるトレ-サ-法と、感度、分離能、選択性に優れる負イオン検出ガスクロマトグラフィ--マスクペクトロメトリ-(GC/MS)とを組み合わせた胆汁の体内動態測定法を確立することを目的とした。 まず、ステロイド核上7aおよび12a位に^<18>Oを標識した3-オキソ胆汁酸を調整した。コ-ル酸をFetizon酸化で3-オキソ体とした後、これをエチレンケタ-ルとして保護し、7および12位を常法通り無水クロム酸で酸化してジオキソ体に誘導した。ついでこれをカリウム塩に導き、H_2^<18>O中90℃、50時間加温してカルボニル酸素の交換反応に付した後、NaBH_4で還元し、3位保護基を除去した〔7,12-^<18>O_2〕3-デヒドロコ-ル酸を調整した。 ひきつづき、血中における胆汁酸3位カルボニル基の還元活性に検討を加えた。本標識体あるいはこれと非標識体との1:1混合物をヒト血液または赤血球画分とインキュベ-ト後、胆汁酸を液・液抽出し、さらに疏水性イオン交換ゲルPHP-LH-20で精製した。ついでペンタフルオロベンジルエステル-トリメチルシリルエ-テルに誘導し、負イオン検出GC/MS分析に付した。その結果、3β-ヒドロキシ体の生成が確認された。一方、熱処理した血液、あるいは白血球、血小板画分では還元成績体は全く認められず、本還元反応が酵素的であり、しかもその活性は赤血球画分に局在することが判明した。因みに、本酵素反応において^<18>O標識体の生物学的同位体効果は全くないことが確認された。以上、肝、腸以外に新たな胆汁酸代謝の場が存在することをはじめて証明するとともに、^<18>O標識体と負イオン検出GC/MSの組み合わせが胆汁酸の代謝研究にきわめて有用なことを立証した。
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