研究概要 |
ペルオキシダ-ゼやウリカ-ゼ等その活性に金属ポルフィリンが関係する酵素の機能とそのメカニズム等を明らかにする目的で,各種の水溶性金属ポルフィリン(TPPS;tetrakis(sulfophenyl)porphine,TMPyP;tetrakisー(1ーmethylpyridiniumー4ーyl)porphine等)及びそれらをイオン交換樹脂に担持した樹脂(担持樹脂)を取り上げ,それらの共鳴ラマンスペクトルを詳細に検討した結果,次に示す知見が得られた。 1.各種の金属同位体を含む金属ポルフィリンを合成し,それらの共鳴ラマンスペクトルを検討した。固体のCuーTMPyP(C10_4)_4では,265と253cm^<-1>のバンドに,固体のNiーTMPyP(C10_4)_4では,315cm^<-1>のバンドに,それぞれ ^<63>Cuー ^<65>Cu及び ^<58>Niー ^<62>Ni置換による金属同位体効果が観測され,これらのバンドは,それぞれCuーN(ピロ-ル環)及びCuーN(ピロ-ル環)伸縮振動であることが分かった。対応するバンドは,担持樹脂上でもほぼ同じ波数で観測され,その結合状態には違いは見られなかった。また,水溶液中のNiーTMPyPでは,243cm^<-1>に,Niー軸配位子の伸縮振動によるバンドが観測された。 2.一部の担持樹脂が,フェノ-ル類に対するモノオキシゲナ-ゼ様作用を有し,CoーTPPSr及びMnーTPPSrが強い活性を示した。最大の活性を示したCoーTPPSrでの反応を共鳴ラマンスペクトルで検討した結果,担持樹脂上のCo^<3+>ーTPPSは,基質により還元されてCo^<2+>ーTPPSになり,このCo^<2+>ーTPPSがフェノ-ル類の酸素添加反応に関与してCo^<3+>ーTPPSに酸化され,もとの状態に戻る。CoーTPPSrは,このCo^<3+>ーTPPSr→Co^<2+>ーTPPSr→Co^<3+>ーTPPSrのサイクルを繰り返すことにより,オキシゲナ-ゼ様作用を示すことが示唆された。
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