研究概要 |
1.数主の市販されている制癌薬について常温硬化性シリコンゲル(以下ファイコン6600と略)を用いた徐放性制癌剤の可能性についてin vitroによる溶出試験、及びin vivoとしてマウスとそのモデル癌L-1210を用いた検討を行ったところ、比較的新油性のカルモフ-ル以外は良好な結果を示さなかった。添加剤として、各種シクロデキストリン誘導体を用いて検討を加えたが、本剤形の添加物としては、それらは適さないことが明らかとなった。しかしグリセリン(Glycerin)を添加する方法を見いだしたので、テガフ-ル(Tegafur)程度の親水性を示す抗癌剤への応用を継続検討中である。2.モデル癌として、白血病であるL-1210、Sarcoma180だけでなく、固型癌であるマウスルイス肺癌(3LL)及びメラノ-マ(B16)を用いて、固型癌の中心にファイコン6600製剤を注射で埋没する方法による治療法を検討したところ、癌組織の内圧が高くゲルの流出が見られるなど、今後の問題点が明らかになった。癌組織の近傍へファイコン6600製剤を注射で埋没することは容易であり、製剤の周辺組織への拡散は認められなかった。3.ファイコン6600そのものの組成を変化させ、硬化時間、ゲル強度等の物性変化と薬物の放出挙動との関係について検討を加えたところ、ファイコンA,B両液の容量配合比、薬物及び添加物の濃度さらに形状などの因子によりファイコンマトリックスの針入度^<a)>に変化が見られた。この針入度がファイコン製剤の物性を示す重要な指標であり、この針入度を調節することにより、ある程度in vitroにおける溶出挙動を予測することが可能となった。 a)軟膏剤の粘稠度を測定する際にしばしば使用される。
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