研究概要 |
1.癌化肥満細胞Mastocytoma P-815細胞のホスホリパ-ゼCの精製:P-815細胞の上清を硫安分画後DEAE-Sepharose CL-6Bにかけたところ、2つの酵素活性のピ-ク(ピ-クI、II)が得られたのでそれぞれを約800倍、1000倍に精製し、その性質の検討を行った。PIP_2分解反応の至適pHはそれぞれ7.5,7.3であった。 PIP_2に対するKm値は共に約0.3mM、PIに対してはその7倍の約2mMと、共によく似た値を示した。PIP_2の分解の至適カルシウム濃度は共に0.1mM、PIでは2mMであった。特にピ-クIの酵素は生理的カルシウム濃度と考えられる10^<-7>M付近では、PI分解活性がPIP_2分解活性の1/1000以下であり、PIP_2に特異的な酵素である可能性が示唆された。既に報告したラット肝臓上清の分子量87Kの酵素に比較すると、ピ-クI、IIの酵素共に至適pHがやや高く、またPIP_2、PIに対するKm値も共に約10倍程度大きいことがわかった。 2.P-815細胞の可溶性GTP結合タンパク質の精製:本細胞の10万xg上清画分には百日咳毒素(PT)の総基質活性の約60%が存在し、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動上で40kタンパク質のADP-リボシル化が検出された。このPT基質タンパク質を硫安分画、DEAE-Sephacel、Ultrogel AcA-34、BlueーSepharoseにより精製した。精製標品にはGTP特異的結合活性およびGTP水解活性が認められたが、GTPγSはADP-リボシル化反応をほとんど阻害しなかった。またその分子量はゲル濾過により約100kと求められた。イムノブロット法を行った結果、抗ウシ網膜Gtα抗体と反応する40kタンパク質のみが検出されたが、抗ブタ脳βγ抗体と反応するタンパク質は検出されず,P-815細胞の可溶性Gi様タンパク質とはかなり異なるサブユニット構造を持つ可能性が示唆された。
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