前年度の研究で、四塩化炭素処置マウスでは、血中のみならず肝臓中でも肝細胞増殖刺激因子(mHGF)活性が著しく上昇することを見出し、次いで障害肝からmHGFの精製を試みたが均一標品を得るまでには至らなかったので、本年度、さらに精製を進めた。障害肝上清画分の硫安分画、アフィゲルブル-クロマトグラフィ-及びヘパリンーセファロ-スクロマトグラフィ-の3段階の操作に加えて、最終ステップとしてSーセファロ-スクロマトグラフィ-を行うことによって、非還元のSDSーポリアクリルアミドゲル電気泳動上、単一のバンドにまで精製することができた。100匹のマウスの障害肝から約8μgの精製標品が得られ、活性の収率は21%、比活性は約28万倍に上昇した。精製mHGFは分子量76Kで、還元すると62Kと31Kに分かれた。mHGFは、初代培養ラット肝細胞のDNA合成に対してhHGFと同様な用量ー反応曲線を示し、その作用はEGFや酸性FGFとは相加的、またインシュリンとは相乗的であったが、hHGFの作用をそれ以上は上昇させなかった。従ってmHGFはhHGFと極めて類似しているが、その作用は抗hHGF中和抗体によって中和されなかったことから、一次構造がやや異なるものと考えられる。mHGF活性は正常マウスの種々の組織でも低いながら検出され、特に肺や腎で高かったが、障害肝における活性には及ばなかった。肝mHGF活性の上昇は、四塩化炭素以外の障害肝でも肝再生に先行して認められたことから、mHGFは肝DNA合成に重要な役割を果たしているものと推測される。
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