研究概要 |
1.膵β細胞培養系におけるストレプトゾトシン(STZ)によるATPの減少;新生仔ラット膵よりヨラゲナ-ゼ消化で単離したβ細胞の単層培養系メジウムにSTZ2mMを添加、1時間の接触後に細胞を洗浄し、さらに培養を継続してβ細胞内のNAD,ATP濃度を定量し、さらにメジウム中へのインスリンの分泌をEIA法で測定した。なおこの実験においてSTZと同様にDNAに損傷を与える強力なカルシノゲンとして知られるメチルニトロニトロソグアニジン(MNNG)の13.6μMで同様に処理をしてSTZとの比較を行った。NADの濃度は6時間後にSTZ,MNNGにより対照の各々7%,2%に激減した。同時点までのインスリン分泌量はSTZでは30%に低下したが、MNNGでは全く減少は認められなかった。またATP濃度はSTZにより接触後の時間依存的に減少し、12時間目では接触直後値の30%にまで下がったが、MNNGでは75%が維持されていた。これらの結果からSTZのβ細胞毒性の直接的因子は、従来考えられていたようなβ細胞のNADではなくATP濃度低下がより重要と推定された。2.キサンチン酸化酵素(XOD)阻害剤アロプリノ-ル(Allo)によるSTZ細胞毒性の防護:次にAlloをβ細胞培養系に予め添加し、その後STZを作用させた時にその毒性が現れるか否かを検討した。Alloは0〜500μMと変化させ、STZ濃度は2mMとした。まずβ細胞のNAD濃度は250μM Alloで正常値となり、インスリン分泌もAllo濃度依存的に回復した。ATP濃度についても全く同様にAlloに対する濃度依存性が認められ、200μMで完全に正常値に復した。これらの事実は、AlloによりSTZのβ細胞毒性が防護ないしは大巾に遅延されることを示しており、STZの作用発現にXODが大きく関与すると考えられた。今後の課題は、(1)ATP減少の機構 (2)ATP減少とXOD系の働らきとの関連、の2点を追究することにあり、これによってSTZの新らしい細胞毒性発現機構が解明されるであろう。
|