研究概要 |
本研究は多くのアイソザイムが存在するUDP-グルクロン酸転移酵素(UDP-GT)を精製するため、この酵素の分離能の高い新しいアフィニティ-担体を開発することを目的とした。この研究は当初オピオイドμ-レセプタ-の精製に使用されるモルヒネ-6-サクニシル-ω-アミノオクチルセファロ-ス4B担体がモルヒネUDP-GTのみでなく、種々の化合物を基質とするUDP-GTをもよく分離することを見いだしたことが端緒となった。しかし、この担体のリガンド部分のモルヒネとコハク酸のエステル結合は容易に水解されることから、モルヒネの脱離した置換基がこの酵素の分離に有効であろうと推定した。いくつかのゲルを調製して種々の検討を行なった結果、ω-アミノオクチルセファロ-ス4Bゲルに水溶性カルボジイミドを用いてコハク酸モノメチルエステルを結合させ、アルカリ処理したゲルがよい分離能を示すことが明らかになった。溶出した分画をさらにクロマトフォ-カシングに付すと必ずしも等電点の順に分離されてはいなかったことから、このゲルによる分解は、主に疎水性結合が関与した1種のアフィニティ-クロマトグラフィ-であるものと推定される。このゲルを用いて未処理ラット肝UDP-GTの精製を試みた。ミクロソ-ムをEmulgen911で可溶化し、このゲルに付すとモルヒネに対する活性は4つのピ-クに分離された。1つの分画をさらにUDP-ヘキサノ-ルアミンセファロ-ス4Bカラムに付して精製した。この酵素はモルヒネに高い特異性を示し、4-ヒドロキシビフェニ-ルにも低い活性を有するが、4-ニトロフェノ-ル、アンドロステロンあるいはテストステロンに対する活性は認められなかった。SDS-PAGEにおいて単一バンドを示し、モノマ-の分子量は52,000であった。これらの性質から、精製した酵素はラット肝のモルヒネに特異性の高い新たなUDP-GTアイソザイムであると考えられる。
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