前年度の研究では、UDPーグルクロン酸転移酵素(UDPーGT)の分離精製に有効な新しいアフィニティ-担体ゲルの調製方法について検討を行った。本年度はこの担体を使用して、ラット、モルモット、イヌ肝のUDPーGTの精製を行なった。なお、本年度の実施計画として挙げていた高速液体クロマトグラフィ用カラムによる、本酵素の分離精製を試みたがよい結果を得ることはできなかった。そのため、前年度開発したωーcarboxypropionylaminooctyl Sepharose 4Bゲルカラムのあとのステップにクロマトフォ-カシングあるいはさらにUDPーhexanolamine Sepharose 4Bゲルカラムを用いて分離精製を行なった。その結果、ラット肝ミクロソ-ムから4ーnitrophenolと4ーhydroxybiphenylに特異性の高いほぼ均一な標品が得られた。前年度ラット肝ミクロソ-ムからmorphineに特異性の高いUDPーGTをすでに精製しているが、本年度部分精製したラットの酵素は別の分子種であった。モルモット肝ミクロソ-ムについても、同様の方法により分離精製を行なった。モルモットは他の動物種とは違い、ヒトと同様にmorphineのグルクロン酸抱合において、主代謝物であるmorphineー3ーglucuronideの他に副代謝物として活性代謝物であるmorphineー6ーglucuronideを生成する。モルモット肝にはmorphineの3位と6位に活性を示すUDPーGTと6位にはほとんど活性のない2種のUDPーGTの存在を明らかにし、morphine3位に特異性を示し、4ーhydroxybiphenylにも高い活性を示すUDPーGTの均一標品を得て、15個のNー末端アミノ酸配列を決定した。また、イヌ肝ミクロソ-ムからも同様な方法によって分離精製を行ない、2つのmorphineに活性を示すUDPーGT精製標品が得られ、1つの分子種の15個のNー末端アミノ酸配列を決定した。以上のように本研究において開発した担体ゲルによって4つのUDPーGTを精製することができた。
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