研究概要 |
経口投与薬物の血液中濃度持続化に関しては,頻回投与のほか薬物の放出制御を考慮した製剤の開発が試みられ,すでに実用化された製剤もある。しかしながら,このような製剤はその製造過程が複雑である上,服用後食物あるいは生理的条件の影響を受け易く,血液中濃度の維持が必ずしも容易とはいえない。本研究では,腸内細菌による代謝を利用する観点から,薬物に化学的修飾を施したプロドラッグを対象として,それらの生体内挙動に関する知見を集積し,より効率的に薬理活性を持つ親薬物の血液中濃度を持続化する方法を開発することを目的とする。 モデルプロドラッグとしてサリチル尿酸(サリチル酸グリシン抱合体)を用いた。腸内細菌の代謝を利用したプロドラッグの実用化を考える場合の問題点として第一にあげられることは,腸内細菌の薬物代謝活性の制御である。腸内細菌の構成は,宿主の生理,外来菌,食物,薬物などによって変動することが知られており,これらの要因は,腸内細菌による薬物代謝にも影響を及ぼすと考えられる。そこで要因の一つとして抗生物質前処理の影響について検討した。1.ラタモキセフ静注前処理の影響ーサリチル尿酸の経口,直腸投与で共に,サリチル酸生成の著しい低下は認められず,ラタモキセフ前処理の影響は,顕著ではなかった。 2.セファレキシン経口前処理の影響ーサリチル尿酸経口投与の場合,サリチル酸の血中濃度は,コントロ-ルに比べ顕著に減少し,セファレキシン前処理の影響がみられたが,サリチル尿酸直腸投与の場合,セファレキシン前処理によるサリチル酸生成の低下は,認められなかった。 これらの結果により,サリチル尿酸投与後のサリチル酸の血液中への出現について,直腸投与は経口投与に比べ,抗生物質前処理の影響を受け難いことが明らかとなった。
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