研究概要 |
プロリルエンドペプチダ-ゼに特異的なインヒビタ-が実験的に動物に起こした記憶喪失を予防する効果を見いだしてきた。この機講を解明するため、酵素の構造と触媒機能を明らかにする必要があると考え、新規インヒビタ-を開発し活性部位の構造を検討した。1、プロリルエンドペプチダ-ゼの活性部位の検討:本研究者は酵素に特異的なインヒビタ-として、ZーThioproーthioprolinalが強力な阻害力を示した(J.Biochem.,104.580)。更に詳細に検討するため、各部位の光学的特異性についての検討、硫黄原子の置換や保護基の検討を行った。その結果、L型のプロリンをD型に変えると阻害作用が激減した。prolineにSを持つthioprolineにすると阻害力は増すが、Oに変えると減少した。保護基は疎水性の強い方がよく、benzyloxycarbonyl基が一番強い阻害効果が現れることが判った。2、プロリルエンドペプチダ-ゼのクロ-ニング:酵素を蛋白分解酵素で分解後、HPLCでペプチド断片を分離し、アミノ酸配列を明らかにした。得られた配列をもとにDNAを合成し、これをプロ-ブとした。Flavobacterium染色体DNA遺伝子バンクより酵素遺伝子を得、酵素遺伝子の全塩基配列を明らかにした。塩基配列から推定されるアミノ酸配列の548番目から552番目にセリン酵素としての共通配列GlyーXーSerーXーGlyが見られ、550番目のセリン残基が触媒に関与すると推定された。酵素遺伝子を持つプラスミドpFPH5K50で形質転換した大腸菌DH1株は高いプロリルエンドペプチダ-ゼ活性を示した。現在牛脳のプロリルエンドペプチダ-ゼについてクロ-ニングを行っている。本研究により、プロリルエンドペプチダ-ゼの活性部位構造と、酵素遺伝子の全構造を明らかにすることが出来た。
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