研究概要 |
1.ヒト胎盤ホモジネ-ト可溶性画分から硫安分画、Sepaharose,Sephadex Gー75及びMonoSカラム(HPLC)を用いて胎盤1個当たり20mgの抗凝固蛋白質を分離し、これをPlacental Anticoagulant Protein(PAP)とした。 2.PAPは Ca^<2+>依存性リン脂質結合蛋白質“annexin"族の一員であり、内因系及び外因系血液凝固反応を強く阻害した。 3.PAPはメチレンブル-存在下の光酸化によって分子中のHis残基が破壊されその抗凝固作用並びにリン脂質に対する結合能が消失した。 4.PAPのトリプシン分解で得られたペプチドに強い抗凝固活性を示すものが認められ、そのアミノ酸配列分析からPAP分子中の151ー244残基に最も高い活性が認められ、260ー275残基にも活性が認められた。 5.PAP分子中のHis3残基周辺の配列を含むペプチド3種合成し、その抗凝固活性を測定した結果、204ー209残基及び266ー271残基に相当するペプチドSHLRKV及びDHTLIRには強い抗凝固活性が認められたが97ー102残基に相当するKHALKGには活性は認められなかった。また、前2者のHis残基をAla残基に置換したペプチドSALRKV及びDATLIRには全く活性が認められず、このことはPAP分子中のHisー205とHisー267残基がPAPの活性に必須であり、Ca^<2+>またはリン脂質との結合にこれらの残基が深く関与していると推察された。 6.抗PAP単クロ-ン抗体をKohler&Milstenの方法に従って調製し、これを用いてPAPの生体内分布をWestern blot法で、細胞内局在を間接蛍光抗体法を用いて検討した。その結果、PAPはヒト肝臓、腎臓、大腸中に検出され、血管内皮細胞を初め各種培養癌細胞中にも検出された。また、PAPの細胞内局在を結腸腺癌のWiDr(上皮性細胞)及びCOLO320DM(円形細胞)細胞を用いて検討したところ、共に膜近傍に局在することが判明した。
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