(1)ブタ肺のカルボニル還元酵素を微量であるが、結晶とすることが可能となった。 (2)本酵素の定常状態における還元反応の速度論的解析から、本酵素は補酵素に対しては協同性を示さないが、カルボニル基質に対して負の協同性を示すことが判明した。この協同性はpH6.5以上で起こり、水素イオンが本酵素の構造に影響することが明らかになった。また、脂肪酸などの活性化剤はこの協同性を消失させるが、見かけのKmとVmax値も増大したので、活性化剤は水素イオンとは異なるコンホメ-ションの変化をひきおこすことが示唆された。 (3)本酵素による特異なアルデヒド酸化反応は、生成物の分析と速度論的解析から、酵素に結合した補酵素の酸化還元サイクルに共役してアルデヒドの水和物がカルボン酸に酸化され、非水和型アルデヒドはアルコ-ルに還元される反応機構であることが明らかになった。 (4)化学修飾によって、本酵素の活性部位およびエフェクタ-部位にはそれぞれ反応性の異なるリジン残基が存在することが示唆された。 (5)金コロイド染色法を用いた免疫組織化学により、本酵素はクララ細胞のミトコンドリア内に高濃度に存在することが明らかになった。また、マウスにおいては、本酵素の活性は胎児から成長に伴って、特に生後1週間目から急激に増加した。しかし、活性化因子である遊離脂肪酸の変動はなかった。この成長過程の本酵素の組織化学的な変動の解析を現在行っている。 (6)マウスではナフタレンを投与後のクララ細胞の壊死や剥離がみられたが、モルモットではこの肺障害が起こらなかった。現在、トリクロエチレンとキノンによる肺障害における本酵素の役割について検討している。
|