研究概要 |
本年度は、肺のカルボニル還元酵素の一次構造について研究し、以下の知見を得た。 1.プロテインシケンサ-を用いて、ブタ肺のカルボニル還元酵素のN末端のアミノ酸配列を調べ、メチオニンから始まる20残基の配列を決定した。また、プロムシアン分解により得られた数種のペプチドのアミノ酸配列も調べ、80残基の部分配列が明らかになった。なお、C末端アミノ酸配列は現在検討中である。 2.ブタおよびモルモット肺のカルボニル還元酵素に対する抗体をプロ-ブとして、ブタ肺のcDNAライブラリ-から本酵素cDNAのクロ-ニングを行った。480万個のプラ-クから6個の陽性クロ-ンが得られ、マッピングにおいて全クロ-ンとも同一パタ-ンを示し、インサ-トは1.2kbであった。このうち、1つのクロ-ンについて約800塩基の配列を決定した。この塩基配列から推定されるアミノ酸配列は精製酵素のN末端およびプロムシアン分解産物の部分アミノ酸配列に一致したので、本クロ-ンがカルボニル還元酵素をコ-ドすることが確認された。また、そのN末端構造領域には、多くのピリジンヌクレオチド依存性脱水素酵素において補酵素との結合に重要とされているドメインと極めて類似する配列が認められた。今後,このcDNAの全一次構造を決定することにより、他の酸化還元酵素とのホモロジ-を検索し、化学修飾により明らかにした補酵素や活性化調節因子の結合に必須なリジンとヒスチジン残基の位置などの構造・機能相関について研究する予定である。また、ブタ、マウス、モルモット肺の本酵素は免疫化学的に類似しているので、同様の手法によりマウスとモルモット肺の本酵素のcDNAの構造解析を行い、その機能構造領域ならびにミトコンドリアへの移行に関わるシグナル配列を比較する計画である。
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