研究概要 |
Peroxisome(Px)膜蛋白質の構造と機能並びにpx形成における役割を明らかにするため、px膜蛋白質に対する各種抗体を調製するとともにcDNAのクロ-ニングを行ない、以下に示す新しい知見を得た。 1.ラット肝px膜を抗原として、px膜に対するモノクロ-ナル抗体を15種類調製した。これら抗体を用い、57kDa及び85kDa蛋白質がpx膜上に特異的に局在していることを新たに見出した。さらに57kDa蛋白質は、px膜上で一部細胞質側を向き、いわゆるpx誘導剤クロフィブレ-トで顕著に誘導される特徴を明らかにした。 2.主要px膜蛋白質(69kDa,22kDa)については、膜蛋白質をSDS-PAGE後抽出し、ウサギに免疫し、ポリクロ-ナル抗体を調製した。現在、本抗体を用い、これらpx膜蛋白質のpxへの輸送過程を培養細胞において解析すると共に、膜蛋白質cDNAクロ-ニングを試みている。 3.ラット肝cDNAライブラリ-をpx膜に対する抗体でスクリ-ニングした結果、12個の陽性クロ-ンを得た。現在解析を進めている5個の部分シ-クエンスをホモロジ-リサ-チすると、2個は未知の蛋白質をコ-ドしている可能性が強く示唆された。また、2個は蛋白質のpx局在化機構を解析する上で興味深い、px及びmicrosomeの両オルガネラに局在するHMG-CoA reductaseであった。さらに本酵素に対する抗体を調製し、両オルガネラ間での酵素分子の構造を比較すると、px型の分子量が数千小さいという新しい知見を得られた。この差異は局在化機構を理解する上で重要と思われる。 これらの知見をもとに、次年度は抗体を用いた各膜蛋白質の生合成、pxへの輸送機構を解析するとともに、cDNAの塩基配列解析等により膜蛋白質の構造と機能の理解を深めたい。
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