研究概要 |
我々は動物肝ミクロゾ-ム(Ms)中に異物アルデヒド類を酸素添加反応により、対応するカルボン酸へと酸化する酵素(Microsomal Aldehyde Oxygenaseと命名、以下MALDOと略す)の存在を初めて見出し、本研究においてその酵素の精製を行い性質を明らかにした。平成元年度の研究成果は以下の通りである。 1)マウス肝Msと^<18>O_2下の反応において、9-anthraldehyde,veratrum aldehyde,cinnamic aldehyde,myrtenal,cuminaldehyde,3-phenylpropionaldehyde等が対応するカルボン酸へと酸化される際に^<18>Oが取り込まれることから、MALDOが多くの異物アルデヒドを基質にすることを明らかにした。 2)9-anthralde-hydeを基質として、生成する9-anthracene carboxylic acidの蛍光(Ex.255nm;Em.458nm)を測定するMALDO活性の測定法を開発した。 3)ddN系雄マウスの肝MsよりMALDOの本体と考えられるシトクロムP450を精製した。方法として、コ-ル酸可溶化、ω-アミノオクチルセファロ-ス4Bカラムクロマト、DEAE-5PW、SP-5PW及びハイドロキシルアパタイトカラムによるHPLCを用いた。精製酵素は分子量5万で、NADPHシトクロムc還元酵素及びジラウロイルホスファチジルコリン、NADPHによる再構成系下、11-oxo-Δ^8-THC(アルデヒド)をΔ^8-THC-11oic acid(カルボン酸)へと酸化する活性を発現した。 4)本酵素はこの他に、9-anthraldehyde、cinnamic aldehyde等を基質とした。 5)本酵素は大麻成分Δ^8-THCの11位をアルコ-ル体(11-OXO-Δ^8-THC)からアルデヒド体(11-oxo-Δ^8-THC)さらにカルボン酸体(Δ^8-THC-11-oic acid)へと3段階の酸化を行う触媒活性を有することが示された。また、ウサギに免役して得た抗体を用いた実験から、マウス肝MsによるΔ^8-THCの酸化反応の大部分はこのP450が担っているものと推察された。次年度は精製酵素を用いて、反応機構の解明、内因性基質について追求を行う予定である。
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