研究概要 |
マクロファ-ジ系培養細胞株J774.1よりLPS結合損傷変異体(LRー9)を分離した。LRー9株は,親株と異なり,LPSに対して耐性であり,LPSにより活性化されることはなかった。しかし,LPSと異なる機構でマクロファ-ジを活性化するザイモザンやTPAで刺激すると,LRー9は親株とほぼ同様に活性化された。これらの結果から,LRー9ではLPSに特異的な細胞内シグナル伝達機構が欠損していることが示唆された。J774.1細胞表面のLPS結合活性を測定するため,LPSにpーOHーフェノ-ル基を導入後,その残基をクロラミンT法でヨ-ド化し,比活性の高い〔125^<>I〕LPSを調製した。これを用いて,4℃における〔^<125>I〕LPS結合能を調べた結果,J774.1細胞に特異的なLPS結合が観察され,およそ5時間で一定の結合量に達することがわかった。それに対し,LRー9では,LPSの特異的結合能が親株に比べて著しく低下していた。さらに,結合飽和曲線からScatーchard分析を行うと,親株には高親和性および低親和性の2種類の結合部位が存在し,一方LRー9株では高親和性の結合に損傷のあることが判った。これらの結果から,高親和性のLPS結合部位がJ774.1細胞におけるLPSの活性化に関与することが示唆された。また,LPSの結合はプロテア-ゼ処理によりほぼ完全に消失することから,LPSの結合にはタンパク質性の分子が関与することも明らかとなった。高親和性LPS結合の特異性を調べる目的で,非放射性のE.coliのR型,S型およびS.minnesotaのR型,S型のLPSを過剰に加え,(^<125>I〕LPS結合阻害を調べた結果,すべてのLPSでほぼ同程度阻害された。従って,LPSの結合には糖鎖の関与はないことが示唆された。さらに,リピドA,リピドIV_A,リピドXもLPSの結合を阻害することから,LPSの結合にリピドA部分が重要であることも判った。
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