研究概要 |
インタ-ロイキン1(ルー1)は単球・マイクロファ-ジから産生される因子であり種々の生体反応に重要な役割を果している。本研究はルー1の細胞増殖抑制・分化誘導活性のシグナル伝達系の解明を目的として研究を行った。その結果、以下のことが明らかになった。 1.細胞周期とルー1の増殖抑制活性に関して ルー1はヒトメラノ-マ細胞株(A375ー6)の増殖を抑制するが、それはルー1がG1からS期への細胞周期の移動を阻害する為であることが明らかになった。 2.ルー1のM1細胞増殖抑制・分化誘導活性とシグナル伝達の解析 ルー1はマウス骨髄性白血病細胞株(M1)の増殖を抑制し、種々のサイトカイン相乗的に働いてマクロファ-ジへとの分化を誘導するが、そのシグナル伝達系の解析を行った。その結果、ルー1の作用にはプロスタグランジンやCa^<2+>、カイネ-スCの関与は否定された。一方、cAMPはルー1と同じ働きを示したがルー1でM1細胞を処理しても細胞内にcAMPに変化はみられなかった。他のいくつかの細胞株で調べてもルー1による直接的な細胞内cAMPの上昇物用は認められなかった。従って、ルー1は細胞内cAMPを昇上させることなしにcAMPと同じシグナルを与えていることが明らかとなった。 3.ヒト羊水中のルー1含量の経時的変動 ルー1が細胞や臓器の増殖・分化に関与している可能性が強いことから、胎児の発育の場であるヒトの羊水中のルー1の経時的変動を調べた。ルー1αは妊娠早期(22週未満)でも検出され、満期に近ずくにつれ増加した。一方、ルー1βは検出されなかった。更に分娩時にα,β共に著るしく増加していた。従ってルー1αは胎児の発育に、ルー1α,βは共に分娩と密接な関係があることが示唆された。
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