肝障害時の分枝鎖アミノ酸補給にあたり、より効果的な各分枝鎖アミノ酸補給比率について検討を進める中で、ロイシンに比しバリンは代謝が遅く、特に肝障害時には著しいバリン代謝の遅延が認められた。この点をさらに追求するために、^<15>Nで標識したLーロイシン(^<15>NーLーLeu)とLーバリン(^<15>NーLーVal)を用いて、四塩化炭素急性肝障害ラットにおける^<15>Nの利用と代謝を比較検討した。〔方法〕SD系雄ラットを用いて、四塩化炭素急性肝障害ラットを作製した。このラットに250μmol/100g体重の^<15>NーLーLeuまたは^<15>NーLーValを胃内投与し、その5時間後に採血、肝、脳、骨格筋を採取した。また、5時間の蓄尿を行った。血清および尿中ウレア、血清アルブミンさらに肝、脳、骨格筋の蛋白ならびに非蛋白分画内の^<15>Nーenrichmentを^<15>Nアナライザ-を用いて測定した。〔結果〕^<15>NーLーLeu投与5時間後の血漿ロイシン濃度は投与前値まで低下したが、^<15>NーLーVal投与では、血漿バリン濃度の著名な増加のみならずロイシンやイソロイシン濃度にも増加が認められた。血清アルブミンおよび肝蛋白分画内^<15>Nーenrichmentは、^<15>NーLーLeu投与群が^<15>NーLーVal投与群に比べ有意の高値を示した。また、脳の非蛋白分画内^<15>Nーenrichmentは^<15>NーLーLeu群が^<15>NーLーVal群に比し有意の高値であった。尿中尿素窒素の^<15>Nーenrichmentは^<15>NーLーLeu群が高値を示し、尿素ー^<15>N排泄量も高い傾向にあった。〔考察〕ロイシンは肝障害ラットの肝蛋白合成に利用されやすく、エネルギ-欠乏状態の脳に多量に取り込まれるなどバリンに比べ利用効率の高い窒素源と考えられる。さらに過剰の窒素が速やかにウレアに合成され血中より消失する点においても、窒素不耐のみられる肝障害時の窒素源として望ましいものと推測された。
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