研究概要 |
1.トロンビン刺激により誘導される血小板の溶血活性は、血小板内cAMP濃度を上昇させる試薬(PGE1,dibutyryl cAMP)、およびグルコ-ス代謝阻害剤(2ーdeoxyglucose)で血小板を前処理すると抑制された。エステラ-ゼ阻害剤、活性酸素スカベンジャ-は溶血反応に影響を与えなかった。シクロオキシゲナ-ゼ阻害剤(アセチルサリチル酸、インドメタシン)は濃度依存的に溶血活性を抑制したが、リポキシゲナ-ゼ阻害剤(nordihydorogu aiaretic acid)は抑制しなかった。これらの結果から、溶血活性はレセプタ-を介した血小板の活性化に伴いエネルギ-依存的に誘導されるもので、溶血因子としてはシクロオキシゲナ-ゼ経路の代謝産物が関与している可能性が示唆された。 2.静止血小板依存性の腫瘍細胞傷害反応については、エオジンY染色法、形態観察による測定以外に、 ^<51>Cr遊離法にても測定し、血小板により標的細胞から特異的に ^<51>Cr遊離が起こることを見いだした。血小板依存性細胞傷害反応には標的特異性が認められ、Kー562,KU812(以上骨髄性白血病細胞株)、KGー1(グリオ-マ細胞株)、LU99A(肺癌細胞株)は血小板感受性であったが、U937(組織球腫細胞株)、MIAPaCaー2(すい臓癌細胞株)、Moltー4(T細胞性白血病細胞株)は血小板非感受性であった。感受性細胞株は血小板結合性であったが、非感受性株のうちUー937も血小板結合性であった。しかし他の非感受性株は血小板非結合性であった。透過型電子顕微鏡にて血小板によるKー562細胞傷害反応を観察すると、血小板とKー562細胞との結合部には、Tリンパ球によ細胞傷害反応の場合にもみられるinterdigitation(かん合)形成が認められ、標的細胞の細胞質、核、ミトコンドリアに顕著な変性が認められた。血小板による細胞傷害反応は、第一段階として標的細胞と血小板の結合が必要で、それにひき続き第二段階のキリング反応がおこるのではないかと考えられた。Uー937では第二段階の反応が起こらないのであろう。
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