新血管拡張薬(Kチャンネル開口薬)の狭心症治療薬応用への基礎的研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01571247
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 佐藤 慶祐 東北大学, 医学部, 講師 (50125564)
• キーワード: K^+ーchannel opener / nicorandil / cromakalim / K^+ーchannel opener antagonist / glibenclamide / 太い冠動脈 / 冠動脈血管床

研究概要

本年度の大きな研究実績はポタシウムチャンネルオ-プナ-(K^+-channel opener)と一括して呼ばれている薬物(nicorandil,pinacidil,cromakalim)の作用様態が、作用する血管の部位によって異なるということが、特異的なK^+-channel openerの薬理学的拮抗薬であるglibenclamideによって明らかになったことである。すなわち、実験はイヌの摘出冠動脈の太い部分(左回旋枝)のリング標本を栄養液中に懸垂して、その張力の変化を測定した。トロンボキサン様物算U46619、Kclで収縮させた冠動脈をNicorandil、pinacidil、cromakalimは拡張させた。glibenclamideの処置によって、Cromakalimの濃度作用曲線は、平行に右方に移動した。schild plotからpA_2は7.47で傾きは1であり、薬理学的拮抗を示した。pinacidilの拡張作用もglibenclamideによって抑制され、PA_2値は7.93であったが傾きは0.59であった。一方、K^+-channel openerであるnicorandilの血管拡張作用は、glibenclamideによって全く、抑制されなかった。この点において、K-Channel openerといわれる薬の作用様態に大きな違いがあることが判明した。nicorandilの血管作用のメカニズムは、guanylate cyclaseの阻害薬であるmethylene blreによって抑制されることから、C-GMPの上昇を介するNitroglycerin様のメカニズムであることが明らかとなった。一方、冠動脈血管床のcromakalim、nicorandilによる血流増加作用は、glibenclamideによって同程度に明確に抑制された。このことは血管の部位、太い動脈、細い動脈において、血管拡張作用が異なることを示唆する。今後の課題は細い血管、心筋等で明確にK-channel openerとして作用するのに、太い冠動脈ではK^+-Channel openerとして、なぜnicorandilが作用しないのかを解明する課題が残された。

研究成果

• [文献書誌] Gotanda,K.,Yokoyama,H.Sato,K.& Taira,N: "Cardiohemodynamic effects of cromakalim and pinacidil pottasium-channel openners,in the dog,special referece to venous return." Cardiovasc.Drug.Ther.3. 507-515 (1989)
• [文献書誌] Gotanda,K.,Yokoyama,H.Sato,K.& Taira,N: "Caraiohemodynamic effects of cromakalim and pinacidil pottasium channel openners" Japan.J.Pharmacol. 49. 58 (1989)
• [文献書誌] Sato,K.,Gotanda,K.& Taira,N.: "Antispmodic and spasmolytic effects of cromakalim(BRL 34915),nicornadil and diltiazem." Japan.J.Pharmacol.49. 245 (1989)
• [文献書誌] Sato,K.,Goto,T.,Yokoyama,H.& Taira,N.: "The effects of nicolandil and cromakalim(potassium channel opners)on venous return in the dog." Japan.Circ.J.53. 858 (1989)
• [文献書誌] Sato,K.,Mori,T.& Taira,N.: "Vasodilator profiles of nicorandil and cromakalim(potassium channel opners)in the porcine coronary artery." Cardiovasc.Drugs.Ther.3.Suppl. 626 (1989)