本研究は、蛍光検出高速液体クロマトグラフィ-(HPLC)の高感度、高分離能に着目し、発蛍光団を有する新規アルコ-ル性水酸基用光学活性誘導体化剤を開発するとともに、それを用いる体液中β-遮断薬光学異性体の高感度測定法を確立することを目的とした。 まず、発蛍光団としてビナフタレンを、反応活性基としてカルボニルシアニドを配した新規軸性不斉誘導体化剤の開発を行った。ジメチル1.1'-ビナフタレン-2.2'-ジカルボキシレ-トを出発物質とし、数工程を経て(±)-2-メチル-1.1'-ビナフタレン-2'-カルボン酸に誘導した。ついでにこれを(-)-ブルシンとの塩に導き、分別結晶にて光学分割後、酸クロリドに誘導し、ヨウ化亜鉛存在下トリメチルシリルシアニドとの交換反応に付して、目的とする(+)-および(-)-2-メチル-1.1'-ビナフタレン-2'-カルボニルシアニドを調製した。 ひきつづき、N-イソプロピル型およびN-tert-ブチル型β-遮断薬としてそれぞれプロプラノロ-ル、ペンブトロ-ルを取り上げ、本誘導体化剤との縮合条件に検討を加えた。その結果、キヌクリジン存在下アセトニトリル中60℃、10分加温するとき、これらβ-遮断薬は不斉炭素上水酸基を介して本プレラベル化剤と縮合し、定量的に対応する発蛍光性エステルに誘導されることが明らかとなった。因みに、本条件下ラセミ化はまったく起こらないことが確認された。ついでこれらジアステレオマ-のHPLC分離の条件に吟味を加えた結果、順相型の固定相を用いるとき、光学異性体は明確に分離されるばかりか、蛍光波長420nm(励起波長342nm)でモニタリングするときの検出限界が200pg(S/N=10)と感度にも優れることが判明した。さらに、生体試料のクリ-ン・アップ法を検討し、血中プロプラノロ-ル光学異性体の高感度測定法を確立した。
|