1.ラットで坐骨神経切断により自傷行為を発現させるには、坐骨神経を大腿部での切断が有効であることを明らかにした。すなわち、指の欠損にまで至る自傷行為の発現率は、坐骨神経を大腿部で切断したラットの方が坐骨孔で切断したラットより高率であった。 2.自傷行為を示すラットでは脊髄のsubstance P(SP)に対する感受性が低下している可能性を明らかにした。すなわち、対照ラットはSP(1nmol)の脊髄クモ膜下腔内投与により43%で後肢を咬む反応が惹起されたが、自傷行為発現ラットでは同様の反応は惹起されなかった。SPを10nmolに増加すると50%で同様の反応が惹起された。今後、自傷行為の発現したラットでSPレセプタ-のダウンレギュレ-ションが起こっているか否かを検討する計画である。 3.SP拮抗薬とされるスパンタイドは脊髄クモ膜下腔内投与ではSPの疼痛反応誘発作用に拮抗しなかった。 4.脊髄のSP含有ニュ-ロンは侵害刺激により活性化されることを明らかにした。しかし、自傷行為の発現したラットでSPのmRNAの脊髄レベルには有意な増加を観察できなかった。持続的な侵害刺激を加えると、脊髄でSP前駆体をコ-ドするmRNAレベルが増加した。綿条体、中脳、延髄のmRNAレベルのいずれも変化しなかった。坐骨神経切断により自傷行為の発現したラットの脊髄内のSPのmRNAレベルを測定したが対照群との間に有意差が認められなかった。今後、in situハイブリダイゼ-ション法を用いて自傷行為とSPのmRNAの脊髄レベルとの関連の再検討を計画中である。
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