本研究では動物の中枢神経に存在する筈と理論的に予測されている物質で、中枢神経にあるベンゾジアゼピン受容体に選択的に結合するものを探索し、その物質の本体を明らかにせんとした。先ず目的物を分離したとして、それがベンゾジアゼピン受容体に結合するか否かを確認するために、ベンゾジアゼピン受容体分画をマウス脳から調整した。この分画に放射性トリチウムで標識したflunitrazepamを6nM結合させ、別に中枢神経から分離した内因性ベンゾジアゼピンリガンド分画を作用させ、放射性flunitrazepamの置換活性を測ることにより、内因性ベンゾジアゼピンリガンドの量と存在を知ることのできる系を完成させた。 1)ウシ脳から内因性ベンゾジアピンリガンドの検索 ウシの大脳皮質を磨り潰し、アセトン・メタノ-ルで抽出したが、目的リガンドは確認できたものの、充分量とれなかった。 2)ウシ脊髄からの内因性リガンドの分離 ウシ脊髄のホモジネ-トからゲル濾過法などを駆使して内因性リガンドの分離を試みたところ、フラクション47ー49に高い受容体結合親和性を有する物質を確認した。このフラクションに含まれる内因性ベンゾジアゼピンリガンドは分子量1000以下の物質で、少なくとも過去に報告されているジアゼパム、デスメチルジアゼパム、βーカルボリンメチルエステルのいずれでもないリガンドであることが薄層クロマトグラフィ-で確認された。ウシ脊髄から分離した内因性ベンゾジアゼピンリガンドは5種以上存在すること、ペプチドではないことが確認できた。 3)サル脳およびヒト血漿から内因性リガンドの分離 サル脳およびヒト血漿からウシ脊髄と類似の方法で内因性ベンゾジアゼピンリガンドを検出せんとしたが失敗した。
|