本年度は、痴呆性徘徊老人の日常の安全を確保し、十分な介護が可能な環境を整えるために電子保護システムの基本的骨格を概略完成することを目標にした研究を行った。同時に特別養護老人ホ-ムや一般家庭でのシステムの応用上の安全性や問題点を検討することにより、以下のような結果を得た。 (1)老人の行動の追跡・把握に必要な携帯用発信装置についてはすでに開発したものを一層小型化・軽量化した。なお、より強固なソリッドタイプにして使用上の安全性を向上させた。 (2)発信装置を装飾的にも種々のデザインを考えるなど工夫して、できるだけその携帯が目立たないようにするとともに、患者の所持不快感を可能な限り除くようにした。 (3)老人の健康状態を把握するために一部開発済みの体温、脈拍、呼吸を測定する装置を改良した。また、測定値をマイクロプロセッサで処理し、異常時のデ-タのみを圧縮記憶して送信できるようにした。なお、健康状態の追跡のための装置と行動追跡用発信装置を一体化した携帯用送信機を開発中である。 (4)臨床上の安全性を考慮した計測・処理・送信系の設計法を確立した。また、上記送信機を経て老人から得られる情報を受信する装置と、これをパ-ソナルコンピュ-タで処理するソフトウエアを開発した。 (5)介護者に老人の外出を知らせるランプやチャイムによる警報器の改良を行い、信号伝送線路として電源ラインを利用できるようにした。これにより、収容スペ-スに余裕のない一般家庭でも容易に設置できるようにした。また、電話線とポケットベルを併用することにより夜間には警報音で他人の迷惑を掛けないで済むように設計した。
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