研究概要 |
平成2年度に、塗抹MPO陰性である急性白血病(一般的には急性リンパ性白血病、即ちALL)及びリンパ腫の合計28例を検索した。前駆B細胞ALLに骨髄系抗原(CD13/CD33)が重複発現している追加例は、5例認めた。内1例で、塗抹標本にてMPO発現を認めた。研究開始時点から渉獵できた、前駆B細胞ALLに骨髄系抗原と重複発現した症例は、合計17例である。その内、MPO発現を認めたのは結局2例である。1例は、研究の端緒となった株化細胞「Tahr87」の由来患者である。一方、T細胞系統症例は、8例で、試験管内誘導を含め、骨髄系抗原の発現を認めたものは、1例あったが、MPO遺伝子発現を認めなかった。T細胞系統では、MPO発現重複症例は、2例のままである。しかし、形質検索で未熟T細胞段階(CD7、CD7+5,それぞれだけ発現)に限れば、背景となる母集団が少数であるため、2/9となり、低い頻度ではない。未熟T細胞腫瘍のAML(急性骨髄性白血病)転換は一貫して継続報告されていて、AML転換との関係で、前駆B細胞ALLにおける骨髄系抗原の重複発現に加えMPOを重複発現する症例の記載と比較して、より有意な可能性がある。 γIFNによるMPO遺伝子発現の抑制は、Tahr87のみでなく、HL60でも認め、反復確認した。MPO遺伝子発現昂進を来すシグナルは見出せなかった。 結論として、前駆B細胞ALLでは骨髄系抗原の重複発現は希でなく認められ、そしてごく希にMPOをも発現としているものがある。そして未熟段階のT細胞腫瘍(CD7、CD7+5,だけそれぞれ発現)では,統て骨髄系抗原を重複発現し、その中である低い頻度でMPOの発現がある。γIFNはMPO遺伝子発現を抑制する。
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