今年度は、ヒト赤血球中インスリン分解酵素(IDE)の安定した状態での分離精製法の開発と、EIAによるIDE分解活性測定法について検討を行った。 1.IDEの分離精製法の改良 前年度において、IDEの不安定性を考慮した分離精製法を検討し、活性を保持したIDE分画を得ることが出来るようになったが、まだ若干の不純物を含んでいた。また大量の試料を処理するのにも不向きであった。そこで、新たにイオン交換クロマト2段階分離(弱イオン交換体、強イオン交換体)とクロマトフォ-カシングの組合せにより、ヒト赤血球中より高純度のIDEを4行程で分離する方法を開発した。本分離行程は、(1)弱イオン交換体(DEAEーsepharose)、(2)強イオン交換体(Mono Q)、(3)ゲルろ過(Superdex200)、(4)クロマトフォ-カシング(Mono P)の4行程で、1行程当り100ml(10g/dl Hb)の試料から約24時間で高純度のIDEが分離可能となり、また試料の濃縮などの前処理を最少限にしたため、出発試料からの回収率も向上した。得られたIDE分画は、分子量的10万(PAGE)、pI4.9であり、その至適pHは10mM HEPES緩衝液でpH7.2前後であった。 2.IDE活性測定法 次に、これらの分離手段の開発に伴って、迅速、簡便なIDE活性測定法が必要となり、新たに自動化EIA法によるIDE活性測定法について検討した。活性測定用基質は、精製IDEの至適pHよりpH7.2(HEPES)とし免疫化学的反応条件を考慮して、1%アルブミン、100μU human mono component insulin溶液とし、反応停止液として終濃度0.5mM Nーエチルマレイイミドを用いた。本測定法は、短時間(2時間)で再現性良くIDE活性が測定可能であった。
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