研究概要 |
本研究は,臨床指導者である看護婦が実際にどのような指導行動をとっているかを問題にした。そして,研究を進める根拠として,「個別的な臨床実習指導論(PTCNE)」という概念枠組みを考えた。これは個々の臨床指導者の内面にあって,実際の指導行動を方向づける指導に対するものの見方・考え方を意味している。 本年度は,前年度に作成した質問紙をもとに,愛知県内の臨床実習指導者332名の指導行動と,かれらの個人的および職業的背景について調査し考察した結果,次のような知見を得た。 具体的な指導行動39項目に対する反応結果を因子分析することによって,PTCNEの基本構造を得た。すなわち,その構造は「緊急感緩和,実践介助,看護技術訓練,プロ意識の育成,自己啓発の促進」から構成していることが示唆された。さらに,5因子の合成得点に着目することによって,臨床指導者の個別的な実習指導の仕方を,5次元のプロフィ-ルに描くことを試みた。これによって,臨床実習指導法に対する自己診断の可能性が示唆された。従って,さまざまな臨床場面での指導法を,各自でしかも視覚的に捉えることが可能になったと言えよう。その活用範囲は広いと思われる。例えば,さまざまな看護場面で学生へ指導する場合の差異,各自の指導法の経時的な変化,あるいは指導する対象学生のレベルによって,どのような指導法をとっているのかなどに関して,適切な資料を得ることができるであろう。これらについては次年度検討していくことになる。また,臨床実習指導者の個人的・職業的背景についての実態調査からは,平均年齢34.6歳,臨床経験11.9年,指導経験4.6年であること,性格的には情緒安定性と社会適応性の性格の傾向が示唆された。 以上の結果は,第16回日本看護研究学会,第32回日本教育心理学会で発表し,本学の紀要において公刊した。
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