研究概要 |
1.Inーgel DNA renaturation法およびcーmyc,Kiーras,neu癌遺伝子をプロ-ブとしたサザ-ンハイブリダイゼ-ションでスクリ-ニングした。その結果、白人症例7例中1例にcーmyc遺伝子増幅が1例にcーmyc,Kiーrasの同時遺伝子増幅がみられ、いずれも低分化型癌であった。しかし本邦の55例については有意な遺伝子増幅は見られなかったため、卵巣癌の発癌過程に関して人種差あるいは地域差が考えられ、以下は本邦例のまとめである。 2.卵巣腫瘍全体の52.7%に正常卵巣に比してcーmyc遺伝子の発現亢進が見られたが、neu,Kiーras遺伝子では見られなかった。 3.cーmyc遺伝子の3倍以上の発現亢進例は漿液性嚢胞癌と類内膜腺癌において全体のそれに比して有意に高かった。現在これらの症例について予後との関係を追跡中である。 4.cーmys遺伝子の発現亢進例についてinーsituハイブリダイゼ-ションと免疫組織化学を行ったところ、mRNAとCーMYC蛋白質は腫瘍細胞に見られた。しかしmRNA発現量と蛋白量は必ずしも平行関係がなかった。 5.残念ながら臨床ステ-ジとcーmyc遺伝子の発現程度の間に相関は見られなかったがcーmycが卵巣癌の発癌初期に深く関わっていることが考えられる。 6.興味深いことに正常卵巣におけるcーmyc発現は胎盤に比して遥に高く、卵胞の成育とcーmyc発現に何らかの関係があることが示唆されたため、ラットの排卵系を用いて検索を進めている。
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