ヘリオトロン型閉じ込め装置における高速イオンの軌道損失量の改善を目的として磁気軸シフトの効果を調べた。 高速イオン(エネルギ-20-23keV)は、短パルス(20ms)の中性粒子入射装置NBIより生成され、ほぼ磁場に垂直な速度成分を持つ粒子として振舞う。ト-ラス装置の上部にとり付けた中性粒子エネルギ-の分析器により、この入射イオンがプラズマ中の中性原子と衝突して乗じる高速中性子粒子即を検出し、ト-ラス方向の空間分布を測定した結果、以下の事が判明した。 1.高速中性子束の空間分布はト-ラス内側に約3-5cm傾っている。 2.この空間分布は磁気面の変形や磁気軸の移動によらずほぼ一定である。 3.磁気面の外側に周回する高速粒子の存在を確認できた。 以上の測定結果は粒子軌道理論と比較することができる。即ち、ヘリカル磁場リップルに深く捕足された粒子はその軌道に沿って磁場の極小値を通りながらト-ラスを周回する。この軌道は、ト-ラス効果によりその中心が幾何軸より△=εt(a)/2εh(a)×aだけずれる事が知られている。ここでεt(a)=a/R(小半径と大半径の比)及びεh(a)はヘリカルリップルを表わす。ヘリオトロンEの値を用いると△3〜4cmとなる。このずれ△は捕足粒子束分布の内側へのずれとよく一致している。垂直磁場印加による磁気軸の移動は磁気面の主半径方向の移動をもたらすが、磁場の等高線には影響を与えない。捕足粒子は、磁場の極小値に沿って周回するため磁気面と独立な軌道を描く。 実験結果は磁気軸の±6cm程度の移動に対して空間分布が不変であった。この結果はこうした軌道理論の予想とよく一致している。
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