研究概要 |
今年度は、巨視(磁気流体)スケ-ルで運動論的なプラズマ非線形現象をあつかうことができる、マクロスケ-ル粒子シミュレ-ション・コ-ドのセミ・インプリシット版を円柱、ト-ラス座標系に書き直す作業を中心に行った。具体的には、2階の空間微分ベクトル演算子含む電磁場の方程式をこれらの座標で書き下して、プレディクタ-・コレクタ-法で得られた電流項(右辺)に対して電磁場を解く方法を開発した。この作業にかなりの時間と労力を費やしたが、この方法は円柱、ト-ラス座標に特有の対称性等を利用していないので、他の幾何学形状をもつ配位に比較的容易に拡張することができると考えられる。 上記のセミ・インプリシット版のマクロスケ-ル粒子コ-ドをプラズマ物理学・輸送現象へ応用するための準備として、ふたつのシミュレ-ションによるチェックを行った。ひとつは、磁場が主半径方向に非一様なト-ラス・プラズマであり、このとき或時刻の磁場デ-タを用いて粒子軌道を追跡した結果、新古典拡散輸送と密接な関係のあるバナナ軌道が確認された。第2としては、安全係数が1を切る電流ビ-ムにたいする「ヘリカル・キンク不安定性」のシミュレ-ションを再現し(参考:M.Tanaka and T.Sato,Phys.Fluids,29,3823(1986))、不安定性の成長率を正確に測定することを試みた。理想MHD不安定性の時間スケ-ルである、数(ポロイダル)アルフベン時間のうちに、電流ビ-ムは、m/n=1/1のキンク状に変形することが観測された。線形成長率は電流ビ-ム軸の径方向へのシフトの速さを対数プロットすることにより測定され、この値は磁気流体理論が与える線形成長率とつじつまがあっている。これを進めてMHD理論と正確に比較するために、現在同じ初期条件を用いてMHDコ-ドでランを行って成長率を求める作業を行っている。
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