D-T反応により生成されるα粒子計測を行う上で必要となる大電流のLi^-ビ-ム源の開発のためには、Li^-の生成機構を解明することが重要である。現在までのところ、Li^-はLi_2分子の形成を通じて生成されると考えられている。そこで小型イオン源内に発生するLiプラズマより引き出されるLi^-量の各プラズマパラメ-タに対する依存性を測定することによりLi^-の生成/破壊機構を研究した。今年度実施した研究内容と成果を下記にまとめる。 1.イオン源より引き出されるLi^-量は引出し領域に与える磁場(フィルタ-磁場)が小さいとき、放電電力には比例せず飽和することが分かった。また、Li^-生成量はイオン源の壁温度を増加することにより増大できる。更に、Li^-の生成量はプラズマ側の引出し電極の電位を調整することにより増大できることが分かった。 2.上記の壁温度の影響がLiの中性粒子の増大と相関するものと考え、容器壁温を変化させてLi粒子束を測定した。その結果、測定されたLi粒子束とLi^-との間に良い相関が見られることが分かった。なお、研究を更に前進させるためLi原子の測度分布を測定するため、現在も作業中である。また、これまでの研究では当初予定されていたLi_2^+とLi^-の間の比例関係は観測されていない。この点についても作業を継続する予定である。 3.関連する素過程デ-タをもとに、Li^-量を計算するモデルを構築することを試みた。荒いモデル計算は可能であるが、H^-に対して提案されているモデルと同レベルの理論を構築するには、低エネルギ-領域での電子やLi原子、Li^+による破壊過程に対する断面積、及び生成過程全般に関する断面積の正確な値が必要となる。 4.絶対値を直接比較することはできなかったが、上記1の実測と上記3による予測値との比較を試みた。その結果、現有のデ-タでは引出し領域付近の電子温度の影響が正しく評価されないことが分かった。
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